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社会保険(年金・健康保険・雇用保険・労災保険等)の保険給付等を算定する基準が各法律により定められていますが、法律により名称が「賃金」であったり「報酬」であったり、またそれぞれの対象となる内容・範囲に違いがあるので注意が必要です。 以下は詳細ならびに関係法令・判例です。 --------------------------------------------------------------------------- ■「賃金」とは? ●労働基準法 賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。 (法第11条) ■労働基準法の施行に関する件(昭和22年9月13日 発基第17号) 法第11条関係 1.労働者に支給される物又は利益にして、次の各号の一に該当するものは、賃金とみなすこと。 (1) 所定貨幣賃金の代りに支給するもの、即ちその支給により貨幣賃金の減額を伴ふもの。 (2) 労働契約において、予め貨幣賃金の外にその支給が約束されてゐるもの。 2.右に掲げるものであつても、次の各号の一に該当するものは、賃金とみなさないこと。 (1) 代金を徴収するもの、但しその代金が甚だしく低額なものはこの限りでない。 (2) 労働者の厚生福利施設とみなされるもの。 3.退職金、結婚祝金、死亡弔慰金、災害見舞金等の恩恵的給付は原則として賃金とみなさないこと。 但し退職金、結婚手当等であつて労働協約、就業規則、労働契約等によつて予め支給条件の明確なものはこの限りでないこと。 参考:平均賃金の算定 ■この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前3箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。 (法第12条) ■賃金の総額には、臨時に支払われた賃金及び3箇月を超える期間ごとに支払われる賃金並びに通貨以外のもので支払われた賃金で一定の範囲に属しないものは算入しない。 (法第12条の4項) ■賃金が通貨以外のもので支払われる場合、賃金の総額に算入すべきものの範囲及び評価に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。 (法第12条の5項) □労働基準法施行規則 第2条 労働基準法 第12条第5項 の規定により、賃金の総額に算入すべきものは、法令又は労働協約の別段の定めに基づいて支払われる通貨以外のものとする。 参考:時間外、休日及び深夜の割増賃金の計算 ■割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。 (法第37条4項) □労働基準法施行規則 第21条 法第37条第4項 の規定によつて、家族手当及び通勤手当のほか次に掲げる賃金は、割増賃金の基礎となる賃金には算入しない。 1 別居手当 2 子女教育手当 3 住宅手当 4 臨時に支払われた賃金 5 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金 ●労働者災害補償保険法 直接「賃金」の定義はない ■給付基礎日額は労働基準法第十二条 の「平均賃金」に相当する額とする。 (法第8条) □労働基準法 第12条 この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前3箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。 ●雇用保険法 この法律において「賃金」とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うもの(通貨以外のもので支払われるものであつて、厚生労働省令で定める範囲外のものを除く。)をいう。 (法第4条4項) 賃金のうち通貨以外のもので支払われるものの評価に関して必要な事項は、厚生労働省令で定める。 (法第4条5項) ★労働保険徴収法の定義と同じ 参考:賃金日額の算定 ■賃金日額は、算定対象期間において被保険者期間として計算された最後の6箇月間に支払われた賃金(臨時に支払われる賃金及び3箇月を超える期間ごとに支払われる賃金を除く)の総額を180で除して得た額とする。(法第17条) ●労働保険の保険料の徴収等に関する法律(労働保険徴収法) この法律において「賃金」とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うもの(通貨以外のもので支払われるものであつて、厚生労働省令で定める範囲外のものを除く。)をいう。 (法第2条2項) 賃金のうち通貨以外のもので支払われるものの評価に関し必要な事項は、厚生労働大臣が定める。 (法第2条3項) ★雇用保険法の定義と同じ ◆賃金総額に算入されるもの ○基本給、固定給等の基本賃金(労働者に通常支払われる賃金の本体部分) ○超過勤務手当 ○深夜手当、休日手当 ○宿日直手当等 ○扶養手当、子供手当、家族手当等 ○住宅手当 ○奨励手当(精勤手当、皆勤手当等) ○役職手当(管理職手当等) ○技能手当、物価手当、教育手当、別居手当 ○特殊作業手当(危険有害業務手当、臨時緊急業務手当等) ○地域手当(寒冷地手当、僻地手当、地方手当等) ○調整手当(配置転換、制度改定時の調整手当等) ○賞与(ボーナス、期末手当等) ○通勤手当(所得税非課税部分を含む) ○通勤のために支給される現物給付(定期券、回数券等) ○事業主が負担した、労働者が本来負担すべき所得税、雇用保険料、社会保険料等 ○出張に伴う日当等で実費弁償と考えられないもの ○創立記念日等の祝金(恩恵的なものでなく、かつ全労働者又は相当多数に支給される場合) ○事業主から配分を受けるサービス料・チップ(従業員が直接お客から受取るものは除く) ○労働基準法の規定による休業手当 ○名称を問わず労働協約、就業規則等で定めのある現金または現物給与 ○住宅の貸与を受ける利益 (貸与を受けない他の者に均衡手当が支給されている場合) (労働者から費用徴収があるが、実際費用の3分の1以下の徴収金額となる場合は差額分が対象となる) ◆賃金総額に算入されないもの ○恩恵的給付である結婚祝金、死亡弔慰金、災害見舞金、出産見舞金等(労働協約、就業規則等であらかじめ支給条件が明確になっているものを除く) ○退職金、年功慰労金 ○賃金に相当しない役員報酬 ○実費弁償的な出張旅費 ○労働基準法の規定による休業補償費(法定額を上回る部分を含む) ○労働基準法の規定による解雇予告手当 ○創立記念祝金、私傷病見舞金(労働協約、就業規則等に定めのない場合に限る) ○制服、赴任手当 ○事業主が負担する生命保険料 ○事業主が負担する財産形成貯蓄のための奨励金等 ○福利厚生と認められる住宅の貸与を受ける利益 (一部の労働者のみに貸与され、他の者に均衡手当が支給されていないこと) (労働者から費用徴収する額が均衡手当の3分の1以上の場合) (労働者から費用徴収があり、実際費用の3分の1以上の徴収をしている場合) ○食事(食事の現物支給は「食事の供与による利益の客観的評価額が、社会通念上、僅少なものであり、賃金の減額を伴わず、食事の支給が労働条件の内容となっていない」場合は賃金とならない) ○ストックオプションによる利益 ■「報酬」とは? ●健康保険法 この法律において「報酬」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び3月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない。 (第3条5項) ★厚生年金保険法の定義と同じ ■報酬又は賞与の全部又は一部が、通貨以外のもので支払われる場合においては、その価額は、その地方の時価によって、厚生労働大臣が定める。 (法第46条) 健康保険組合は、前項の規定にかかわらず、規約で別段の定めをすることができる。 (法第46条2項) ◆報酬に該当するもの 1.金銭によるもの 基本給、役付手当、残業手当、食事手当、休業手当、精勤手当、皆勤手当、家族手当、通勤手当、宿直手当、日直手当、住宅手当、支給回数が4回以上の賞与、決算手当、休職手当等 2.現物によるもの 通勤定期券、被服(勤務服でないもの)、食券・食事、住宅、寮等 ◆報酬に該当しないもの 1.金銭によるもの 臨時に受ける者(大入り袋など)、解雇予告手当、退職手当、支給回数が3回以上の賞与(「報酬」には含まれないが、賞与に対する保険料が徴収される)、決算手当、出張旅費、業務上の交際費、慶弔費等(結婚祝い金、災害見舞金)、傷病手当金、休業補償給付等 2.現物によるもの 勤務服(制服・作業着) ●厚生年金保険法 賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び3月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない。 (第3条3項) ★健康保険法の定義と同じ ■報酬又は賞与の全部又は一部が、通貨以外のもので支払われる場合においては、その価額は、その地方の時価によつて、厚生労働大臣が定める。 (法第25条) 参考:定時決定 ■社会保険庁長官は、被保険者が毎年7月1日現に使用される事業所において同日前3月間(その事業所で継続して使用された期間に限るものとし、かつ、報酬支払の基礎となつた日数が17日未満である月があるときは、その月を除く。)に受けた報酬の総額をその期間の月数で除して得た額を報酬月額として、標準報酬月額を決定する。 (法第21条) 前項の規定によつて決定された標準報酬月額は、その年の9月から翌年の8月までの各月の標準報酬月額とする。 (法第21条2項) 第1項の規定は、6月1日から7月1日までの間に被保険者の資格を取得した者及び第23条又は第23条の2の規定により7月から9月までのいずれかの月から標準報酬月額を改定され、又は改定されるべき被保険者については、その年に限り適用しない。 (法第21条3項) 参考:随時改定 ■社会保険庁長官は、被保険者が現に使用される事業所において継続した3月間(各月とも、報酬支払の基礎となつた日数が、17日以上でなければならない。)に受けた報酬の総額を3で除して得た額が、その者の標準報酬月額の基礎となつた報酬月額に比べて、著しく高低を生じた場合において、必要があると認めるときは、その額を報酬月額として、その著しく高低を生じた月の翌月から、標準報酬月額を改定することができる。 (法第23条) 前項の規定によつて改定された標準報酬月額は、その年の8月(7月から12月までのいずれかの月から改定されたものについては、翌年の8月)までの各月の標準報酬月額とする。 (法第23条2項) ※ 報酬が何月分の物かではなく、「実際に支払われた月」の報酬として取扱う。 ※ 6ヶ月定期などは1/6して1ヶ月分の報酬額を算定する。 ※ その際に1円未満の端数が発生したときは切り捨て処理とする。 ※ 3月平均の標準報酬額を算定する場合(1/3処理)に1円未満の端数が発生したときは切り捨て処理とする。 ■厚生労働大臣が定める現物給与の価額とは? ■厚生労働大臣が定める現物給与の価額(平成21年厚生労働省告示第231号) 健康保険法第46条、厚生年金保険法第25条、労働保険徴収法第2条3項に基づき厚生労働大臣が定める現物給与の価額は以下のとおり。 (平成21年3月31日厚生労働省告示第231号 平成21年4月1日現在の価格) (平成25年2月4日厚生労働省告示第17号 平成25年4月1日現在の価格) 食事で支払われる報酬等(東京都) 1人1月当たりの食事の額 19,800円(18,900円) 1人1日当たりの食事の額 660円(630円) 1人1日当たりの朝食のみの額 170円(160円) 1人1日当たりの昼食のみの額 230円(220円) 1人1日当たりの夕食のみの額 260円(250円) 住宅で支払われる報酬等(東京都) 畳1畳につき 1,360円(2,400円) ・他都道府県で社宅を借り上げている場合は、支店の存在する都道府県価額を適用する。 (平成25年3月31日までは、全て本社所在地の現物給与の価額(標準価額)が適用された) ・標準価額を算出する面積は生活空間のみで、玄関・トイレ・浴室・キッチン等の面積は除く。 ・事業主が被保険者から使用料を徴収する場合は、標準価額から徴収額を差し引いた額が報酬となる。 ・標準価額から差し引ける使用料は「家賃」に対する部分のみで「共益費」の被保険者負担は差し引けない。 ・何畳かが不明な場合は2畳=3.3uで換算して算出する。 |
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