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2017年07月07日

最高裁判所第二小法廷
平成27(ネ)3329
医療法人社団Y事件

年俸1,700万円の医師の時間外手当請求です。
年俸が高いので話題になりましたが、特に新しい内容ではありません。固定残業代の考え方と同じですね。
割増賃金を支払う旨の合意や支払実績ではなく、割増賃金の判別性、算定可能性が重要となります。

ポイント
@割増賃金を基本給や諸手当にあらかじめ含めて支払う方法自体が直ちに法に反するものではない。
A労働契約における基本給等の定めにつき、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要。
B割増賃金に当たる部分の金額が労働基準法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回るときは、使用者がその差額を労働者に支払う義務を負う。

判示
@時間外労働等に対する割増賃金を年俸1,700万円に含める旨の合意がされていたものの、このうち時間外労働等に対する割増賃金に当たる部分は明らかにされていなかった。
A本件合意によって支払われた賃金のうち時間外労働等に対する割増賃金として支払われた金額を確定することすらできないのであり、支払われた年俸について、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することはできない。
Bしたがって、年俸の支払により時間外労働及び深夜労働に対する割増賃金が支払われたということはできない。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86897


2017年3月6日

最高裁判所第一小法廷
平成27(行ケ)10219
フランク三浦事件

上告を棄却し、高裁判決が確定
商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,そのような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者に与える@印象,A記憶,B連想等を総合して全体的に考察すべきであり,しかも,その商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断すべきである。
もっとも,商標の外観,観念又は称呼の類似は,その商標を使用した商品につき出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず,したがって,上記3点のうちその1において類似するものでも,他の2点において著しく相違することその他取引の実情等によって,何ら商品の出所に誤認混同をきたすおそれの認め難いものについては,これを類似商標と解すべきではない。

当該判決は、「商標登録の有効性」についての判断ですが、
・外観において明確に区別し得る。
・商品の指向性を全く異にするもので,取引者や需要者が,双方の商品を混同するとは到底考えられない。
等の理由で「フランク三浦」の商標登録は有効とされました。

もっとも、商標登録が有効だからと言って「フランクミュラー」と外観が酷使した時計を作ったらアウトですけど・・
でも・・似てません?
他の方面から攻めるべきですね。。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=85835


2017年02月28日
最高裁第三小法廷
平成27(受)1998
国際自動車事件

1日15.5時間労働で働くタクシー乗務員の複雑な給与体系での事案です。
基本給+服務手当+歩合給+時間外手当なのですが、歩合給の計算が特殊です。
歩合給=(所定内揚高−所定内基礎控除額)×歩率−時間外手当−交通費
つまり、所定内揚高が多い月は「歩合給+時間外手当」になるが、所定内揚高が少ない月は実質的に「歩合給」のみとなります。

原審は、歩合給計算で売上高等の一定割合に相当する金額から残業手当等に相当する金額を控除する旨の賃金規則上の定めが公序良俗に反し無効であるとしました。
最高裁は、賃金規則における賃金の定めにつき、通常の労働時間の賃金に当たる部分と労基法37条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することができるか否かや、そのような判別をすることができる場合に、当該賃金規則に基づいて割増賃金として支払われた金額が同条その他の関係法令に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かについて審理判断していないとして差し戻しとなりました。

つまり、給与規程の計算方法が、時間外手当相当の金額を他手当から控除する方法でも、当該定めが当然に労基法37条の趣旨に反するものとして公序良俗に反し無効にはならないことになります。ポイントは、当該計算方法でも法定以上の時間外手当が支払われているかになります。

時間外手当の基礎となる賃金には算入しないのは、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金のみです(労基法施行規則21条)。
歩合給についても、歩合給の額を総労働時間で割って、歩合給に含まれる時間外手当相当額を洗い出す必要があります。
つまり、当該会社の給与規程では時間外手当の一部が歩合給内で支払われていることになっているのです。

当初の規程はもっとシンプルで関係者も内容を理解していたのが、規程改正を繰り返しているうちに、会社自身が管理・把握しずらい規程になってしまったのでしょうか?

故に、当該事案では、「時間外手当+歩合給に含まれる時間外手当」が、労基法37条で計算した時間外手当以上なのか、下回っているのかを計算して判断しろ!
って言っているだけなのです。。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86544


2016年02月19日

最高裁判所第二小法廷
平成25(受)2595
山梨県民信用組合事件(退職金請求事件)

1. 就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意の有無については,当該変更を受け入れる旨の労働者の行為の有無だけでなく,当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度,労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様,当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等に照らして,当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも,判断されるべきである。

2.合併により消滅する信用協同組合の職員が,合併前の就業規則に定められた退職金の支給基準を変更することに同意する旨の記載のある書面に署名押印をした場合において,その変更は上記組合の経営破綻を回避するための上記合併に際して行われたものであったが,上記変更後の支給基準の内容は,退職金総額を従前の2分の1以下とした上で厚生年金制度に基づく加算年金の現価相当額等を控除するというものであって,自己都合退職の場合には支給される退職金額が0円となる可能性が高かったことなど判示の事情の下で,当該職員に対する情報提供や説明の内容等についての十分な認定,考慮をしていないなど,上記署名押印が当該職員の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点から審理を尽くすことなく,上記署名押印をもって上記変更に対する当該職員の同意があるとした原審の判断には,違法がある。


労働契約法の公布(平成19年12月5日)前の事案ですが、判例法理を法律化したのが当該法律です。

経営破綻を回避するために行われた合併に際し、退職金規程の見直し(当初案は合併前金額保証だったが、最終決定内容の計算結果は0円)が行われ、書面による同意もあった事案です。

個別の労働契約を締結しない慣習の日本では、就業規則を労働契約の内容とするケースがほとんどです。
労契法7条は「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。」とあり、就業規則は使用者側主導で作成が可能です。
労基署への届出も労働者側の意見書添付が必要ですが、あくまで意見なので内容の同意は求められていません。

労契法9条は「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。」とあり、反対解釈として労働者(労働者代表ではなく個人のことです。)の合意があれば不利益変更も可能です。
当該合意(書面の同意書あり)について争われたケースです。

これについて、就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意 の有無については、
@当該変更を受け入れる旨の労働者の行為の有無だけでなく
A当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度
B労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様
C当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等
に照らして,当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点から判断されるべきものとしました。

自由な意思に基づいた不利益変更の同意(特に賃金や退職金)かを判断する際に、書面による同意だけでなく、労働者に不利益の内容を十分に理解させる等が必要です。
しかし、「労働者にもたらされる不利益の内容及び程度」が判断基準に挙げられていることから、「内容理解+同意」があっても、不利益の程度によっては当該同意が有効とされないこともあるのです。

本来の手続き順位は以下となります。
@不利益変更内容の検討(どこまでの不利益が有効とされるのか)
A不利益変更の必要性の説明
B不利益変更内容の詳細説明(具体的な個人ごとの変更後の詳細)
C変更の同意(書面)
D就業規則改正+届出
E合併

当該事案では、Bが不足し、Dが行われていません。
Bが不足することで同意とは認められませんでした。

裁判では争いとなっていませんが、Dが行われていないことで、どのような効果になるのでしょう?
労契法12条は「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による」とあり、当該事案では不利益に関する個別同意(個人ごとの労働契約)があっても既存の就業規則の内容が適用となります。

経営破綻を回避する合併作業で忙しかったのでしょうか?
吸収する側のデューディリジェンスで人事関係の知識が不足していたのでしょうか?

では仮に一部の労働者の「C変更の同意」のみが取れなければどうなるのでしょうか?
・同意した労働者には新就業規則が適用
・不同意の労働者には旧就業規則が適用
・新たに採用した労働者には新就業規則が適用

就業規則をネットで探せば簡単に手に入りますが、事業の将来や今後の法改正をよく検討したうえで作成しないと、将来に禍根を残すことになります。
一旦、就業規則を作成してしまうと、要件を充足しない就業規則の不利益変更を実施しても無効となり、旧就業規則の内容が適用となるのです。

各種労働法や判例法理に精通した方に就業規則の作成を依頼して下さい。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85681


2015年06月08日
最高裁第二小法廷
平成25(受)2430
地位確認等請求反訴事件「専修大学事件」

労働者災害補償保険法に基づく療養補償給付を受ける労働者が、療養開始後3年を経過しても疾病等が治らない場合には、使用者は、当該労働者につき、労働基準法81条の打切補償を支払って、同法19条1項ただし書の適用を受けることができる。

● 解説
労災で療養中は労基法19条により解雇できない。
例外として労基法81条の打切補償を行えば解雇できる。
この打切補償をするための要件@は労基法75条の療養補償を会社が行う必要があるが、
労基法84条に労働者災害補償保険法に基づいて労基法の災害補償に相当する給付が行なわれる場合は、
会社は療養補償を支払う責を免れるとある。
この事案でも、会社は労基法75条の療養補償は支払っていないが、これを補填する労働者災害補償保険法の療養補償給付が支給されていた。
労基法81条の打切補償の要件を条文どおり解釈すると、労基法19条の例外にあてはまらず解雇できない。

労災保険の保険料は賃金に保険料率を乗じて計算し全額会社負担です。
万が一の労災事故のために全ての会社が拠出して運営していると考えれば、費用負担の観点からも妥当な判決かもしれません。 しかし、労基法が最高10年以下の懲役を定めている法律である関係上、厳密な運用が求められるわけです。

■労働基準法(一部省略あり)
第19条(解雇制限)
要件@使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間は、
効果●解雇してはならない。
例外■ただし、使用者が、第81条の規定によつて打切補償を支払う場合においては、この限りでない。

第75条(療養補償)
労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。

第81条(打切補償)
要件@第75条の規定によつて補償を受ける労働者が
要件A療養開始後3年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合においては、
要件B使用者は、平均賃金の1200日分の打切補償を行い、
効果●その後はこの法律の規定による補償を行わなくてもよい。

第84条(他の法律との関係)
この法律に規定する災害補償の事由について、労働者災害補償保険法に基づいてこの法律の災害補償に相当する給付が行なわれるべきものである場合においては、使用者は、補償の責を免れる。

■労働者災害補償保険法(一部省略あり)
第7条
この法律による保険給付は、次に掲げる保険給付とする。
1.労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡に関する保険給付

第12条の8
第7条第1項第1号の業務災害に関する保険給付は、次に掲げる保険給付とする。
1.療養補償給付
以下省略


2015年05月19日
最高裁判所第三小法廷
平成26(許)36
労働基準法114条の付加金の請求の価額は、当該付加金の請求が同条所定の未払金の請求に係る訴訟において同請求とともにされるときは、当該訴訟の目的の価額に算入されない


2015年04月16日
東京都労働委員会事務局
ファミリーマート事件命令書交付について

申立人:ファミリーマート加盟店ユニオン
被申立人:株式会社ファミリーマート

●主文(要旨)
1.会社は、組合の組合員と会社とのフランチャイズ契約の再契約の可否を決定する具体的な判断基準についての団体交渉を拒否してはならず、速やかに、かつ、誠実に応じなければならない。
2.会社は、下記内容の文書を組合に交付しなければならない。
「会社が、組合の申し入れた団体交渉に応じなかったことが不当労働行為であると認定されたこと。今後、このような行為を繰り返さないように留意すること。」
3.会社は、前各項の履行報告をしなければならない。

● 判断のポイント
1.フランチャイズ契約であっても、その実態においてフランチャイジーがフランチャイザーに対して労務を提供していると評価できる場合もあり得るから、フランチャイズ契約との形式であることのみをもって、労働組合法上の労働者に該当する余地がないとすることはできない。
本件の実態を鑑みると、加盟者は、会社に対して労務を提供していたといえる。
2.(1)本件における加盟者は、会社の事業遂行に不可欠な労働力として組織内に確保され、組み入れられていること、(2)その契約内容は、会社によってあらかじめ定型的に定められたものであること、(3)加盟者の得る金員は、労務提供に対する対価又はそれに類する収入としての性格を有するものといえること、(4)加盟者は、会社からの業務の依頼に応ずべき関係にあること、(5)広い意味での指揮監督の下で労務提供している実態があること、(6)本件における加盟者が顕著な事業者性を備えているとはいえないこと。以上のことから、本件における加盟者は、労働組合法上の労働者に当たる。
3.本件の団体交渉申入れ事項であるフランチャイズ契約の再契約の可否の基準は、義務的団体交渉事項に当たると解するのが相当であり、会社が、組合との団体交渉に応じていないことは、正当な理由のない団体交渉拒否に該当する。


2015年02月26日
最高裁判所第一小法廷
平成26(受)1310
職場における性的な発言等のセクシュアル・ハラスメント等を理由としてされた懲戒処分が懲戒権を濫用したものとして無効であるとはいえないとされた事例
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=84883

@被上告人らが従業員Aから明白な拒否の姿勢を示されておらず、本件各行為のような言動も同人から許されていると誤信していたなどとして、これらを被上告人らに有利な事情としてしんしゃくするが、職場におけるセクハラ行為については、被害者が内心でこれに著しい不快感や嫌悪感等を抱きながらも、職場の人間関係の悪化等を懸念して、加害者に対する抗議や抵抗ないし会社に対する被害の申告を差し控えたりちゅうちょしたりすることが少なくないと考えられることや、本件各行為の内容等に照らせば、仮に上記のような事情があったとしても、そのことをもって被上告人らに有利にしんしゃくすることは相当ではないというべきである。

A原審は、被上告人らが懲戒を受ける前にセクハラに対する懲戒に関する上告人の具体的な方針を認識する機会がなく、事前に上告人から警告や注意等を受けていなかったなどとして、これらも被上告人らに有利な事情としてしんしゃくするが、上告人の管理職である被上告人らにおいて、セクハラの防止やこれに対する懲戒等に関する上告人の方針や取組を当然に認識すべきであったといえることに加え、従業員Aらが上告人に対して被害の申告に及ぶまで1年余にわたり被上告人らが本件各行為を継続していたことや、本件各行為の多くが第三者のいない状況で行われており、従業員Aらから被害の申告を受ける前の時点において、上告人が被上告人らのセクハラ行為及びこれによる従業員Aらの被害の事実を具体的に認識して警告や注意等を行い得る機会があったとはうかがわれないことからすれば、被上告人らが懲戒を受ける前の経緯について被上告人らに有利にしんしゃくし得る事情があるとはいえない。

B被上告人らが、管理職としての立場を顧みず、職場において女性従業員らに対して本件各行為のような極めて不適切なセクハラ行為等を繰り返し、上告人の企業秩序や職場規律に看過し難い有害な影響を与えたことにつき、懲戒解雇に次いで重い懲戒処分として有効な出勤停止処分を受けていることからすれば、上告人が被上告人らをそれぞれ1等級降格したことが社会通念上著しく相当性を欠くものということはできず、このことは、上記各降格がその結果として被上告人らの管理職である課長代理としての地位が失われて相応の給与上の不利益を伴うものであったことなどを考慮したとしても、左右されるものではないというべきである。


2014年10月23日
最高裁判所第一小法廷
平成24(受)2231
女性労働者につき労働基準法65条3項に基づく妊娠中の軽易な業務への転換を契機として降格させる事業主の措置と、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律9条3項違反の関係性
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=84577

一般に降格は労働者に不利な影響をもたらす処遇である。
均等法1条及び2条の規定する同法の目的及び基本的理念やこれらに基づいて同法9条3項の規制が設けられた趣旨及び目的に照らせば、女性労働者につき妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格させる事業主の措置は、原則として同項の禁止する取扱いに当たるものと解される。
当該労働者が軽易業務への転換及び上記措置により受ける有利な影響並びに上記措置により受ける不利な影響の内容や程度、
上記措置に係る事業主による説明の内容その他の経緯や当該労働者の意向等に照らして、
当該労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき、
又は

事業主において当該労働者につき降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって、
その業務上の必要性の内容や程度及び上記の有利又は不利な影響の内容や程度に照らして、
上記措置につき同項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するときは、
同項の禁止する取扱いに当たらない
ものと解するのが相当である。


2014年04月08日
中央労働委員会
初審の却下決定を取り消し、各救済申立てを棄却
国からの業務を受託していた法人に雇用されていた労働者が雇止めとなり、国に対し雇用の継続と雇用の安定を求めて団交を申入れたが、初審大阪府労働委員会は救済申立てを却下。再審査で中央労働委員会は国は労働組合法上の使用者に当たらないとした初審の判断は正当だが、却下は適切ではないとし「初審決定を取り消し、各救済申立てを棄却」した。


2014年04月04日
消費者庁
消費者機構日本とスポーツクラブ NAS 株式会社との間の裁判外の和解について
1.損害賠償免責条項、2.諸規則の改定にかかる条項、3.専属的管轄条項、4.閉鎖又は施設の全部若しくは一部の利用制限時の会費にかかる条項につき是正を求め、判決(確定判決と同一の効力を有するもの及び仮処分命令の申立てについての決定を含む。)又は裁判外の和解で合意

新: 本クラブ内で発生した紛失、盗難、傷害その他事故について、それが会社の責に帰すべき事由による場合を除き、会社は一切の責任を負わないものとします。
旧: 本クラブ内で発生した紛失、盗難、傷害その他事故について会社は一切の責任を負わないものとします。

新: 会員及びビジターが本クラブの利用に際して生じた盗難については、それが会社の責に帰すべき事由による場合を除き、会社は一切損害賠償の責を負いません。
旧: 会員およびビジターが本クラブの利用に際して生じた盗難については、会社は一切損害賠償の責を負いません。

新: 削除
旧: 会員と会社の間で訴訟の必要が生じた場合、東京地方裁判所を当該訴訟の第一審専属的合意直轄裁判所とします。
http://www.coj.gr.jp/zesei/topic_140310_02.html


2014年01月29日
最高裁判所第二小法廷
平成24(受)1475
阪急交通社の子会社,阪急トラベルサポートの派遣添乗員が、未払い残業代などの支払いを求めた訴訟
募集型の企画旅行の添乗員の業務につき,業務の性質,内容やその遂行の態様,状況等,本件会社と添乗員との間の業務に関する指示及び報告の方法,内容やその実施の態様,状況等に鑑みると,本件添乗業務については,これに従事する添乗員の勤務の状況を具体的に把握することが困難であったとは認め難く,労働基準法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たるとはいえない


2013年11月24日
大阪地裁第5民事部
地方公務員災害補償法による遺族補償年金において、男性にだけ受給資格の年齢制限を定めた規程があるのは、法の下の平等を定めた憲法に違反すると判断。
男性より女性に手厚い遺族補償年金の規定が憲法に違反するかが争われた訴訟。
共働き世帯が当たり前の今、専業主婦を想定して設けられた男女格差の規定に合理性はないと指摘。


2013年09月26日
最高裁判所第一小法廷
平成24(行ツ)399

住民票記載(出生届に嫡出子又は嫡出でない子)義務付け等請求事件

出生の届出に係る子が嫡出子又は嫡出でない子のいずれであるかは市町村長において戸籍簿の記載との対照等の方法によっても知り得るものであり,届書に嫡出子又は嫡出でない子の別を記載することを届出人に義務付けることが,市町村長の事務処理上不可欠の要請とまではいえないとしても,少なくともその事務処理の便宜に資するものであることは否定し難く,およそ合理性を欠くものということはできない。
戸籍法49条2項1号の規定のうち出生の届出に係る届書に嫡出子又は嫡出でない子の別を記載すべきものと定める部分は,嫡出でない子について嫡出子との関係で不合理な差別的取扱いを定めたものとはいえず,憲法14条1項に違反するものではない。


2013年09月04日
最高裁判所大法廷
平成24(ク)984

非嫡出子の法定相続分を区別することは憲法に違反する
遺産分割審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件

民法900条4号ただし書前段の規定は,遅くとも平成13年7月当時において,憲法14条1項に違反していた。違憲判断は,平成13年7月当時から本決定までの間に開始された他の相続につき,民法900条4号ただし書前段の規定を前提としてされた遺産分割審判等の裁判,遺産分割協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼさない。
---------------------------
民法900条4号ただし書前段
ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。
---------------------------
憲法14条1項
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
---------------------------
現在に至るまでの間の社会の動向,我が国における家族形態の多様化やこれに伴う国民の意識の変化,諸外国の立法のすう勢及び我が国が批准した条約の内容とこれに基づき設置された委員会からの指摘,嫡出子と嫡出でない子の区別に関わる法制等の変化,更にはこれまでの当審判例における度重なる問題の指摘等を総合的に考察すれば,家族という共同体の中における個人の尊重がより明確に認識されてきたことは明らかであるといえる。
そして,法律婚という制度自体は我が国に定着しているとしても,上記のような認識の変化に伴い,上記制度の下で父母が婚姻関係になかったという,子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず,子を個人として尊重し,その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきているものということができる。
以上を総合すれば,遅くとも相続が開始した平成13年7月当時においては,立法府の裁量権を考慮しても,嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われていたというべきであり,当該区別は,憲法14条1項に違反するものと解するのが相当である。


2013年06月06日
最高裁判所第一小法廷
平成23(受)2183 年次有給休暇請求権存在確認等請求事件

解雇により2年余にわたり就労を拒まれた被上告人が,解雇が無効であると主張して上告人を相手に労働契約上の権利を有することの確認等を求める訴えを提起し,その勝訴判決が確定して復職した後に,合計5日間の労働日につき年次有給休暇の時季に係る請求をして就労しなかったところ,労働基準法39条2項所定の年次有給休暇権の成立要件を満たさないとして上記5日分の賃金を支払われなかったた事案。
無効な解雇の場合のように労働者が使用者から正当な理由なく就労を拒まれたために就労することができなかった日は,労働者の責めに帰すべき事由によるとはいえない不就労日であり,このような日は使用者の責めに帰すべき事由による不就労日であっても当事者間の衡平等の観点から出勤日数に算入するのが相当でなく全労働日から除かれるべきものとはいえないから,法39条1項及び2項における出勤率の算定に当たっては,出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれるものというべきである。


2012年11月29日 
最高裁判所第一小法廷
平成23(受)1107 地位確認等請求事件

「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」関係で初めての最高裁判決。
社内基準の点数に満たさないため継続雇用の再雇用を終了させたが、査定内容が恣意的とされ、適正な査定では基準を満たしていたとされた。
実務的には、基準を満たさない場合の査定内容の合理性を、企業側が立証するのが大切です。

@制度の導入手続が法に違反しないか
A制度の選定基準が法に違反しないか
B選定基準(基準測定の正当性含む)を満たしていたか
C労働契約が成立しているといえるか

従業員の過半数を代表する者との書面による協定により,継続雇用基準を含むものとして本件規程を定めて従業員に周知したことによって,継続雇用制度を導入したものとみなされる。
規程所定の継続雇用基準を満たすものであったから,被上告人において嘱託雇用契約の終了後も雇用が継続されるものと期待することには合理的な理由がある。
本件規程に基づく再雇用をすることなく雇用契約の終期の到来により被上告人の雇用が終了したものとすることは,他にこれをやむを得ないものとみるべき特段の事情もうかがわれない以上,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない。

「解雇の法理」が類推適用され、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」場合には、再雇用されたのと同様の雇用関係が存続する。


2012年04月27日
最高裁判所第二小法廷

精神不調の従業員の欠勤は、就業規則所定の懲戒事由である正当な理由のない無断欠勤にあたらない

精神的な不調のために欠勤を続けていると認められる労働者に対しては、精神的な不調が解消されない限り引き続き出勤しないことが予想される。
使用者としては、精神科医による健康診断を実施するなどした上で、その診断結果等に応じて、必要な場合は治療を勧めた上で休職等の処分を検討し、その後の経過を見るなどの対応を採るべきである。
このような対応を採ることなく、労働者の欠勤を正当な理由なく無断でされたものとして諭旨退職の懲戒処分の措置を執ることは、精神的な不調を抱える労働者に対する使用者の対応としては適切なものとはいい難い。
そうすると、労働者の上記欠勤は就業規則所定の懲戒事由である正当な理由のない無断欠勤に当たらないものと解さざるを得ず、上記欠勤が懲戒事由に当たるとしてされた処分は、就業規則所定の懲戒事由を欠き、無効であるというべきである。

平成23(受)903
地位確認等請求事件



2012年3月22日
知的財産高等裁判所
「サトウの切り餅」に入れられた切り込みが特許権を侵害しているとして、越後製菓がサトウ食品工業を相手に、製造差止めと59億4000万円の損害賠償を求めた訴訟で、請求を棄却した第1審東京地裁判決を取り消し、製造差止めと約8億円の損害賠償などを命じる判決(仮執行も認める)。

2011年11月25日
知的財産高等裁判所の中間判決で勝訴した越後製菓が請求金額の変更を申し立て(14億8,500万円から59億4,000万円へ)

2011年09月07日
知的財産高等裁判所
切り餅に入れられた切り込みが特許権を侵害しているとして、越後製菓がサトウ食品工業に対して製造差止め等を求めた訴訟の控訴審で、同社製品は本件発明の技術的範囲に属する等と判断、特許権侵害を事実上認める中間判決

平成23(ネ)10002
特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟

2010年11月30日
東京地裁
越後製菓が切り餅の切り込みに関する特許を侵害されたとして、サトウ食品工業に対し製品の製造・販売の差止め及び損害賠償を求めた訴訟において、越後製菓の特許の内容は切り餅の側面の切り込みに限定されており、上下両面にも切り込みを入れたサトウ食品工業の製品は原告側の発明の技術的な範囲に属さないなどとして請求棄却の判決。


2012年03月08日
最高裁判所第一小法廷

基本給を月額41万円と月額で定めた上で、月間総労働時間が180時間を超えた場合にはその超えた時間につき1時間当たり一定額を別途支払い、月間総労働時間が140時間に満たない場合にはその満たない時間につき1時間当たり一定額を減額する旨の約定のある雇用契約の下において、各月の180時間以内の労働時間中の時間外労働についても、使用者が基本給とは別に割増賃金の支払義務を負うとされた事例
1.基本給について、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外の割増賃金に当たる部分とを判別することはできない
・180時間以内の時間外労働がされても、基本給自体の金額が増額されることはない。
・基本給の一部が他の部分と区別されて時間外の割増賃金とされていたなどの事情はうかがわれない。
・1か月の時間外労働の時間は、月の勤務日数が異なること等により相当大きく変動し得る。

平成21(受)1186
損害賠償・残業代支払請求控訴,同附帯控訴,仮執行による原状回復請求申立て事件



2012年02月24日
最高裁判所第二小法廷

労働者が使用者の安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償を請求するため訴えを提起した場合、その弁護士費用は事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り、上記安全配慮義務違反と相当因果関係に立つ損害と認定した。

平成23(受)1039
損害賠償請求事件



2012年02月21日
最高裁判所第三小法廷

音響製品等の設置、修理等を業とする会社(ビクター子会社)と業務委託契約を締結してその設置、修理等の業務に従事する個人代行店につき、当該会社との関係において以下を考慮し労働組合法上の労働者に当たる。
・事業の遂行に必要な労働力として、基本的にその恒常的な確保のために組織に組み入れられている。
・業務の内容やその条件等について個人代行店の側で個別に交渉する余地がない。
・基本的に会社の指定する業務遂行方法に従い、その指揮監督の下に労務の提供を行っており、かつ、その業務について場所的にも時間的にも相応の拘束を受けている。

平成22(行ヒ)489
不当労働行為再審査申立棄却命令取消請求事件



2012年01月17日
最高裁判所第三小法廷

マンションの区分所有者による管理組合の役員を中傷する文書の配布等の行為は,それにより管理組合の業務の遂行や運営に支障が生ずるなどしてマンションの正常な管理又は使用が阻害される場合には,建物の区分所有等に関する法律6条1項の「共同の利益に反する行為」に当たるとみる余地がある

建物の区分所有等に関する法律
第六条(区分所有者の権利義務等)
区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。

義務違反者に対する措置
第五十七条 (共同の利益に反する行為の停止等の請求)普通決議
第五十八条(使用禁止の請求)3/4以上の決議必要
第五十九条(区分所有権の競売の請求)3/4以上の決議必要
第六十条(占有者に対する引渡し請求)3/4以上の決議必要

平成22(受)2187
名誉毀損文書頒布行為等停止請求事件



2012年01月16日

最高裁判所第一小法廷

公立の高等学校又は養護学校の教職員らが卒業式等の式典において国歌斉唱の際に起立して斉唱すること又はピアノ伴奏を行う旨の各校長の職務命令に従わなかったことを理由とする「戒告処分」
→違法とはいえない

公立養護学校の教職員が卒業式において国歌斉唱の際に起立して斉唱する旨の校長の職務命令に従わなかったことを理由とする「減給処分」
→裁量権の範囲を超えるものとして違法

公立中学校の教員が卒業式において国歌斉唱の際に起立して斉唱する旨の校長の職務命令に従わなかったことを理由とする「停職処分」
→程度の大きい積極的な妨害行為を含む懲戒処分5回及び文書訓告2回を受けていたことを踏まえ、違法とはいえない

公立養護学校の教員が記念式典において国歌斉唱の際に起立して斉唱する旨の校長の職務命令に従わなかったことを理由とする「停職処分」
→裁量権の範囲を超えるものとして違法

なお反対意見を述べた裁判官もいます。

反対意見
その行為は上告人らの精神的自由に関わるものとして,憲法上保護されなければならない。
普通教育においては完全な教育の自由を認めることはできないが,公権力によって特別の意見のみを教授することを強制されることがあってはならないのであり,他方,教授の具体的内容及び方法についてある程度自由な裁量が認められることについては自明のことである。
教育は,その目的を実現するため,学問の自由を尊重しつつ,幅広い知識と教養を身に付けること,真理を求める態度を養うこと,個人の価値を尊重して,その能力を伸ばし,創
造性を培い,自主及び自律の精神を養うこと等の目標を達成するよう行われるものであり,教育をつかさどる教員には,こうした目標を達成するために,教育の専門性を懸けた責任があるとともに,教育の自由が保障されているというべきである。
教育の目標を考慮すると,教員における精神の自由は,取り分けて尊重されなければならないと考える。

平成23(行ツ)242
停職処分取消等請求事件


平成23(行ツ)263
懲戒処分取消等請求事件



2011年12月19日
最高裁判所第三小法廷

ファイル共有ソフトであるWinnyをインターネットを通じて不特定多数の者に公開、提供し、正犯者がこれを利用して著作物の公衆送信権を侵害した事案につき、著作権法違反幇助罪に問われた事件。
被告人に幇助犯の故意が欠ける無罪とされた事例。

平成21(あ)1900
著作権法違反幇助被告事件



2011年10月01日
最高裁第二小法廷

光学機器メーカーの工場に派遣されていた請負業者の元社員が自殺したのは過重労働によるうつ病が原因であるとして遺族が両社に損害賠償を請求した事件で、7,058万円の賠償を認めた判決が確定。
・違法派遣を認定
・深夜交替勤務、時間外労働、休日労働の過重性を認定
・うつ病自殺発症と業務との関係を認定
・派遣元と派遣先らの予見可能性と注意義務違反(安全配慮義務違反)を認定


2011年09月30日
最高裁判所第二小法廷
平成21(行ツ)173 通知処分取消請求事件  


2011年09月22日
最高裁判所第一小法廷
平成21(行ツ)73 通知処分取消請求事件


税制改正の法律施行後、その年の1月1日に遡って効果を適用した件

2010年12月17日 自民党 平成16年度税制改正大綱発表
2011年02月03日 国会提出
2011年03月26日 成立
2011年03月31日 公布
2011年04月01日 施行

●考え方
憲法84条は,課税要件及び租税の賦課徴収の手続が法律で明確に定められるべきことを規定するものである。
これにより課税関係における法的安定が保たれるべき趣旨を含むものと解するのが相当である。
法律で一旦定められた財産権の内容が事後の法律により変更されることによって法的安定に影響が及び得る場合,当該変更の憲法適合性については,当該財産権の性質,その内容を変更する程度及びこれを変更することによって保護される公益の性質などの諸事情を総合的に勘案し,その変更が当該財産権に対する合理的な制約として容認されるべきものであるかどうかによって判断すべきものである。
暦年途中の租税法規の変更及びその暦年当初からの適用によって納税者の租税法規上の地位が変更され,課税関係における法的安定に影響が及び得る場合においても,これと同様に解すべきものである。

●検討内容
改正は,不均衡を解消し,適正な租税負担の要請に応え得るようにするとともに,立法目的として立案され,これらを一体として早急に実施することが予定されたものであったと解される。
暦年当初から適用することとされたのは,その適用の始期を遅らせた場合,損益通算による租税負担の軽減を目的として土地等又は建物等を安価で売却する駆け込み売却が多数行われ,上記立法目的を阻害するおそれがあったため,これを防止する目的によるものであった。
暦年の初日から改正法の施行日の前日までの期間をその適用対象に含めることにより暦年の全体を通じた公平が図られる面があり,また,その期間も暦年当初の3か月間に限られている。
一旦成立した納税義務を加重されるなどの不利益を受けるものではない。

●補足意見
変更の時期が年央(6,7月頃)であるような場合,半年という経済活動等の期間は一つのまとまりをなし,そこで各種所得の累積結果に従って所得税額の見通しも立って来ているといえようから,暦年当初から適用することによって保護される公益などの一層の具体性が要求され,これが明らかにされないと違憲の疑いが生じることがあるというべきである。

売買契約自体は既に前年に締結され,代金等の授受と登記移転・土地の引渡し等が当該年度になったようなケースについてまで,年度途中の本件損益通算廃止を年度当初に遡って適用させることは,不測の不利益を与えることにもなり,また,必ずしも駆け込み売却を防止するという効果も期待し難いところである。
本件改正附則は,いわば既得の利益を事後的に奪うに等しい税制改正の性格を帯びるものであるから,憲法84条の趣旨を尊重する観点からは,上記のようなケースは類型的にその適用から除外するなど,附則上の手当てをする配慮が望まれるところであったと考える。


2011年07月15日
最高裁判所第二小法廷

賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は、更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り、消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらないと解するのが相当である。

平成22(オ)863
更新料返還等請求本訴,更新料請求反訴,保証債務履行請求事件



2011年07月12日
最高裁第三小法廷

消費者契約である居住用建物の賃貸借契約に付されたいわゆる敷引特約が消費者契約法10条により無効ということはできないとする判決

本件契約書には、1か月の賃料の額のほかに、保証金を契約締結時に支払う義務を負うこと、そのうち本件敷引金は本件建物の明渡し後も被上告人に返還されないことが明確に読み取れる条項が置かれていたのであるから、賃借人は、本件契約によって自らが負うこととなる金銭的な負担を明確に認識した上で本件契約の締結に及んだものというべきである。
そして、本件契約における賃料は、契約当初は月額17万5000円、更新後は17万円であって、本件敷引金の額はその3.5倍程度にとどまっており、高額に過ぎるとはいい難く、本件敷引金の額が、近傍同種の建物に係る賃貸借契約に付された敷引特約における敷引金の相場に比し
て、大幅に高額であることもうかがわれない。
以上の事情を総合考慮すると、本件特約は、信義則に反して被上告人の利益を一方的に害するものということはできず、消費者契約法10条により無効であるとい
うことはできない。

平成22(受)676
保証金返還請求事件
最高裁判所第三小法廷



2011年04月12日
最高裁判所第三小法廷

住宅設備機器の修理補修等を業とする会社と「業務委託契約」を締結してその修理補修等の業務に従事する者が加入した労働組合から団体交渉の申入れを受けたが拒絶した事件。

各業務請負人と調整しつつその業務日及び休日を指定し,日曜日及び祝日についても交替で業務を担当するよう要請していたというのであるから,業務請負人は,事業の遂行に不可欠な労働力として,その恒常的な確保のために組織に組み入れられていたものとみるのが相当である。
業務委託契約の内容は,被上告人の定めた「業務委託に関する覚書」によって規律されており,個別の修理補修等の依頼内容を業務請負人側で変更する余地がなかったことも明らかであるから,会社側が契約内容を一方的に決定していたものというべきである。
報酬は,個別の業務委託に応じて修理補修等を行った場合に,商品や修理内容に従ってあらかじめ決定した顧客等に対する請求金額に,会社が決定した級ごとに定められた一定率を乗じ,これに時間外手当等に相当する金額を加算する方法で支払われていたのであるから,労務の提供の対価としての性質を有するものということができる。

業務請負人は,会社が指定した担当地域内において,顧客先で修理補修等の業務を行うものであり,原則として業務日の午前8時半から午後7時までは会社から発注連絡を受けることになっていた上,顧客先に赴いて業務を行う際,子会社による作業であることを示すため,会社の制服を着用し,その名刺を携行しており,業務終了時には業務内容等に関する所定の様式のサービス報告書を会社に送付するものとされていた等から,会社の指定する業務遂行方法に従い,その指揮監督の下に労務の提供を行っており,かつ,その業務について場所的にも時間的にも一定の拘束を受けていたものということができる。

事実関係等によれば,平均的な業務請負人にとって独自の営業活動を行う時間的余裕は乏しかったものと推認される上,記録によっても,業務請負人が自ら営業主体となって修理補修を行っていた例はほとんど存在していなかったことがうかがわれる。以上の諸事情を総合考慮すれば,業務請負人は,被上告人との関係において労働組合法上の労働者に当たると解するのが相当である。

平成21(行ヒ)473
不当労働行為救済命令取消請求事件



2011年04月12日
最高裁判所第三小法廷

オペラ公演を主催している財団法人が,音楽家等の個人加盟による職能別労働組合に加入している合唱団員につき,毎年実施する合唱団員選抜の手続において,過去4年間は,原則として年間シーズンの全ての公演に出演することが可能である契約メンバーの合唱団員として合格とし,その者との間で期間1年の出演基本契約を締結していたが,次期シーズンについてはこの者を不合格としたこと及びこのことに関し組合からの団体交渉の申入れに応じなかった事件。

契約メンバーである合唱団員は,財団との関係において労働組合法上の労働者に当たると解するのが相当である。

平成21(行ヒ)226
不当労働行為救済命令取消請求事件



2011年03月24日
最高裁判所第一小法廷

関西で多い建物賃貸契約での敷引きに関する判決

1.居住用建物の賃貸借契約に付されたいわゆる敷引特約は、敷引金の額が高額に過ぎるものである場合には、賃料が相場に比して大幅に低額であるなど特段の事情のない限り、消費者契約法10条により無効となる。
2.居住用建物の賃貸借契約に付されたいわゆる敷引特約が消費者契約法10条により無効ということはできない

判例のケースでは、敷引金の額は、経過年数に応じて賃料の2倍弱ないし3.5倍強にとどまっていることに加え、賃借人は契約が更新される場合に1か月分の賃料相当額の更新料の支払義務を負うほかには、礼金等他の一時金を支払う義務を負っていないことから、本件敷引金の額が高額に過ぎると評価することはできず、本件特約が消費者契約法10条により無効であるということはできない。

平成21(受)1679
敷金返還等請求事件


2011年03月04日

最高裁判所第二小法廷

早稲田大の年金減額
将来的に年金資産がなくなると予測、減額率を最高35%として段階的に給付を減らすよう年金規則を改定。
受給者側の上告を退ける決定をした。
大学の措置が「有効」とされ、受給者側の逆転敗訴となった二審判決(2009年10月29日 東京高裁)が確定した。

二審判決は「従来の給付水準を維持すれば年金基金の運営はさらに悪化が見込まれ、将来的な制度の破綻を回避するために給付額を減らした規則改定は必要な措置だ」と判断。
無効とした一審東京地裁判決を取り消し、請求を棄却した。


2010年07月12日
最高裁判所

日本IBMが旧商法(現会社法)の会社分割規定を使い、ハードディスク部門を日立製作所側に売却。
日本IBMの元社員が転籍無効やIBM社員としての地位確認を求めた事案。

特定の労働者との関係において承継法5条協議が全く行われなかったときには、当該労働者は承継法3条の定める労働契約承継の効力を争うことができるものと解するのが相当である。

また、5条協議が行われた場合であっても、その際の分割会社からの説明や協議の内容が著しく不十分であるため、法が5条協議を求めた趣旨に反することが明らかな場合には、分割会社に5条協議義務の違反があったと評価してよく、当該労働
者は承継法3条の定める労働契約承継の効力を争うことができるというべきである。

この考えにあてはめ、日本IBM側が社員の代表者との協議で会社分割の目的や背景を説明し、転籍に納得しない社員に対しても最低3回の協議をしていたことなどから、会社からの説明や協議の内容が著しく不十分とはいえず、当該労働者に係る労働契約承継の効力が生じないとはいえないとし、日本IBM側の勝訴となりました。


■会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(承継法)
3条 労働者が分割会社との間で締結している労働契約であって、分割契約等に承継会社等が承継する旨の定めがあるものは、当該分割契約等に係る分割の効力が生じた日に、当該承継会社等に承継されるものとする。

4条 分割契約等にその者が分割会社との間で締結している労働契約を承継会社等が承継する旨の定めがないものは、同項の通知がされた日から異議申出期限日までの間に、当該分割会社に対し、当該労働契約が当該承継会社等に承継されないことについて、書面により、異議を申し出ることができる。

5条 労働者は、通知がされた日から異議申出期限日までの間に、分割会社に対し、当該労働者が当該分割会社との間で締結している労働契約が承継会社等に承継されることについて、書面により、異議を申し出ることができる。

平成20(受)1704 地位確認請求事件  
平成22年07月12日 最高裁判所第二小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所



2010年6月2日
福岡地方裁判所判決

採用についての内々定を得ていた原告が、被告から内々定の取り消しを受けたことは違法であるとして、債務不履行又は不法行為に基づいて、被告に対し、損害賠償を請求した事案

内定式直前に内々定を取り消したのは違法だとして、20代の元男子大学生と元女子大学生の2人が福岡市の不動産会社「コーセーアールイー」に計495万円の損害賠償を求めた。
裁判長は「内々定取消しは、労働契約締結過程における信義則に反し、原告の上記期待利益を侵害するものとして不法行為を構成する」として違法性を指摘した。

判決によると、元女子大学生は2008年5月、元男子大学生は同年7月、それぞれ同社から内々定を得た。
だが、2人には内定式2日前に「金融危機や原油高騰など複合的要因」を理由に内々定を取り消すとの書面が届き、採用されなかった。

また原告側の「内々定によって、始期付解約権留保付労働契約が成立した」という訴えについては認めなかった。

平成21(ワ)2166 損害賠償請求事件
平成22年06月02日 福岡地方裁判所


平成21(ワ)1737 損害賠償請求事件
平成22年06月02日 福岡地方裁判所



2010年5月27日
京都地方裁判所

労災障害等級における男女差に対する違憲判決

業務上災害の火傷により後遺障害を負った男性が、「外ぼうの醜状障害」に関する労災の障害等級の定めに、5等級の男女差があることは違憲であるとして、障害補償給付支給処分の取り消しを求めた裁判で、京都地方裁判所は去る5月27日、原告の主張を認めて処分取り消しを命じる判決を行っ。

平成20(行ウ)39
障害補償給付支給処分取消請求事件  
平成22年05月27日



2010年6月19日
厚生労働省

労災障害等級における男女差に対する違憲判決を受け、障害等級表の年度内見直しを検討

これに対して厚生労働省は、同裁判の控訴期限に当たる6月10日、国として控訴を行わないことを公表。
さらに、違憲と判断された障害等級表については、年度内の見直しを目指し、具体的な検討を進めることとしている。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000006z81.html


2010年3月25日
最高裁判所第一小法廷

退職後の競業避止義務はどこまで問われるのか?

勤務先を退職した従業員が、当該勤務先と同種の事業を営み、その取引先から継続的に仕事を受注した。
取引先の営業担当であったことに基づく人的関係等を利用することを超えて、当該勤務先の営業秘密に係る情報を用いたり、当該勤務先の信用をおとしめたりするなどの不当な方法で営業活動を行ったことは認められなかった。
退職後、同種の事業を営み、その取引先から継続的に仕事を受注した行為は、社会通念上、自由競争の範囲を逸脱した違法なものということはできず、不法行為とはいえない。

コメント: 競業避止義務違反は不法行為の有無で判定し、原則は職業選択の自由を重視する流れ
2010年03月25日
最高裁判所第一小法廷
平成21(受)1168



2010年3月16日
最高裁判所第三小法廷

月額13万円の役員退職慰労年金の打切りには本人同意が絶対要件

もみじ銀行は経営悪化を受け、退職慰労年金の廃止について役員の大半の同意を得た上で、平成16年、規定を廃止し元役員への支給を打
ち切ったが、本件はこれを不当として争いとなったもの。
最高裁は、「(元役員の同意なく)制度廃止の効力を退任した役員にまで及ぼすことは許されない」として、2審の「制度の変更は画一的に行うことができ、効力は同意のないものにも及ぶ」とした判断を破棄した。
平成21(受)1154
退職慰労金等請求事件  
破棄差戻し 東京高等裁判所



2010年1月21日
最高裁判所第一小法廷

神戸市消防局 消防士長が酒気帯びで物損事故。免職は妥当か?

最高裁は市側の上告を受理しない決定をした。
元消防士長の男性(52)に対する免職処分は社会通念上妥当性を欠き、違法であるとして処分を取り消した1審、2審判決が確定。

1審、2審判決によると、男性は飲酒翌日の平成19年年3月30日、自家用車で出勤途中に大型トラックと追突(物損事故)。
呼気1リットル中、0.2mgのアルコールが検出され、酒気帯び運転で摘発され、同年5月、内規に基づき懲戒免職になった。

高裁判決は、海外旅行先から帰りの航空機内で、前夜に飲んだアルコールが、10時間近くたっても分解されずに残ったケースと認定。「飲酒運転の認識があったとするには疑問がある」と指摘した。

また「免職による損害は甚大、公務員の半生を棒に振らせるに等しい」と指摘。
「原則免職」とする指針や運用そのものは「過酷ではない」としたが、男性に処分歴がないことなどを挙げ「懲戒免職処分の際には処分する側にも慎重さが求められる」とした。


2009年10月20日
最高裁第三小法廷

総合商社「兼松」女性賃金差別の違法確定

コース別人事による男女の賃金格差は違法として、総合商社「兼松」社員と元社員の女性計6人が、同社に賃金差額等を求め両者が上告していたが、最高裁判所で上告が棄却され二審の判決が確定した。

判決などによると、女性6人は1957〜82年に採用。
会社側は「職務内容が違うコース別賃金制度による格差で、男女差別ではない」と主張していた。

4人について男女差別を認定し、同社に計約7,250万円の支払いを命じた二審判決が確定した。
一審東京地裁は「賃金体系は違法な女性差別とは言えない」と違法性はないと判断して請求を棄却していた。
しかし、二審東京高裁は4人について、
「男女の差によって賃金を差別するこのような状態を形成、維持した会社の措置は、労基法4条及び不法行為の違法性の基準とすべき雇用関係についての私法秩序に反する違法な行為である」
「4人は一定の経験を積み、男性と同程度の困難な職務をしており、合理性のない差別」
「若い一般職男性社員との間にさえ相当な賃金格差がある合理的理由はなく、性によって生じたと推認される」とし、一審判決を取り消し、賃金差額の支払と精神的損害に対する慰謝料を認めた。

残る2人については「職務内容から給与の格差が違法とまでは言えない」とした。

2008年1月31日
東京高等裁判所
事件番号 平成15(ネ)6078
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=37802&hanreiKbn=05


2009年9月18日
最高裁判所第二小法廷

飲酒運転で懲戒免職は「苛酷」。
飲酒運転で懲戒免職処分を受けた兵庫県加西市の元課長の処分取消請求訴訟の上告審で、最高裁は市の上告を棄却する決定をした。
処分は社会通念上、著しく苛酷で市は裁量権を濫用しているとして処分取消を命じた1、2審判決が確定した。

http://www.city.kasai.hyogo.jp/04sise/11osir/osir0909/osir090929a.htm

2009年9月18日
最高裁判所第二小法廷
平成21年(行ツ)第228号
平成21年(行ヒ)第287号


2009年4月24日
大阪高等裁判所
平成20年(行コ)第167号
平成20年(行ウ)第21号



2009年07月16日
最高裁判所第一小法廷
事件番号 平成19(あ)1951 道路交通法違反,労働基準法違反被告事件
破棄差戻し 大阪高等裁判所


36協定を超えて時間外労働をさせた場合の労基法32条違反罪の適用について

労働基準法の条項全てに対して、違反した際の罰則規定があるわけではありません。
36協定の時間を越えて時間外労働をさせたという事案で、労基法36条1項(ただし書除く)違反には罰則がないが、週40時間の労働時間を定めた労基法32条には罰則があるため、最高裁まで争われました。

第百十九条
次の各号の一に該当する者は、これを六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
第三十二条(労働時間の原則)
第三十六条第一項ただし書(時間外及び休日の労働/坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長)

第三十二条(労働時間)
使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
2 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

第三十六条(時間外及び休日の労働)
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、「労働時間」又「休日」に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
ただし、坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、一日について二時間を超えてはならない。
2 厚生労働大臣は、労働時間の延長を適正なものとするため、前項の協定で定める労働時間の延長の限度その他の必要な事項について、労働者の福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して基準を定めることができる。
3 第一項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者は、当該協定で労働時間の延長を定めるに当たり、当該協定の内容が前項の基準に適合したものとなるようにしなければならない。
4 行政官庁は、第二項の基準に関し、第一項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者に対し、必要な助言及び指導を行うことができる。


原判決は、36協定違反については罰則が設けられていないから、月単位の時間外労働協定違反の事実は犯罪を構成しないとした。
また検察官の請求した週単位の時間外労働の事実を明示する予備的訴因変更を不許可とし、その理由につき、時間外労働というのは、法定労働時間や時間外労働協定といった一定の規範に照らさなければ観念できないものであるから、時間外労働を構成する労働日ないし労働時間が基本的に同一であるとしても、違反している規範を異にしている場合には、それらの時間外労働は社会通念上別個の事実であり両立し得るものであって、基本的事実関係を異にすると解すべきであり、旧訴因の月単位の時間外労働協定違反の事実と新訴因の週単位の時間外労働の事実とでは基本的事実関係を異にし、公訴事実の同一性が認められないとし無罪とした。

これに対して最高裁は、検察官の予備的訴因変更請求は週を特定し、週単位の時間外労働の規制違反の罪を明示して瑕疵を補正しようとしたものと理解できるから、原審は適正な訴因となるように措置した上、予備的訴因変更を許可すべきであったとした。

また、32条1項の文理、36協定の趣旨等に照らすと、原則的な労働時間制の場合であれば、始期から順次1週間について40時間の法定労働時間を超えて労働させた時間を計算し、これを最初の週から順次積算し、上記延長することができる時間に至るまでは36協定の効力によって時間外労働の違法性が阻却されるものの、これを超えた時点以後は36協定の効力は及ばず、週40時間の法定労働時間を超える時間外労働として違法となり、その週以降の週につき上記時間外労働があれば、それぞれ同条項違反の罪が成立し、各違反の罪は併合罪の関係に立つとした。

そして、36協定における次の新たな1か月が始まれば、その日以降は再び延長することができる時間に至るまで時間外労働が許容されるが、1週間が単位となる月をまたぎ、週の途中の日までは週40時間の法定労働時間を超える違法な時間外労働であり、その翌日からは新たな1か月が始まり、時間外労働が許容される場合も生じる(端数日は生じない)。
この場合も、その週について上記違法な時間外労働に係る同条項違反の罪が成立することとなる。

1週間の始期に関しては、問題となる事業場において就業規則等に別段の定めがあればこれによるが、これがない場合には、労働基準法32条1項が「1週間について40時間」とのみ規定するものであることなどにかんがみると、その始期を36協定における特定の月の起算日に合わせて訴因を構成することも許されるとしました。

36協定に違反した場合の罰則効力が明確でない中、この判例によって32条1項違反に根拠を有して罰則が適用される場合が肯定されました。


2006年11月27日
最高裁判所 第二小法廷
平成17(受)1437 学納金返還請求事件  
大阪高等裁判所


平成16(受)2117 学納金返還請求事件  
大阪高等裁判所


2006年12月28日
文部科学省
大学、短期大学、高等専門学校、専修学校及び各種学校の入学辞退者に対する授業料等の取扱いについて
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/07011019.htm

●入学金
その額が不相当に高額であるなど他の性質を有するものと認められる特段の事情のない限り、学生が当該大学に入学し得る地位を取得するための対価としての性質を有するものである。学生は入学金の納付をもって大学に入学し得る地位を取得するものであるから、その後に在学契約等が解除され、あるいは失効しても、学校側はその返還義務を負わない。

●授業料、諸会費等
3月31日までに入学辞退の意思表示をした者(専願又は推薦入学試験の合格者を除く)には、原則として大学は返還する義務を負う。

2010年03月30日
最高裁判所 第三小法廷
平成21(受)1232
事件名 学納金返還請求事件


専願等を資格要件としない大学の推薦入試の合格者が入学年度開始後に在学契約を解除した場合において、学生募集要項に、一般入試の補欠者とされた者につき4月7日までに補欠合格の通知がない場合は不合格となる旨の記載があるなどの事情があっても、授業料等不返還特約は有効である。